
「うれしいひなまつり」の歌詞についての第2弾です。
♪灯りをつけましょ・・・・・♪の、サトウハチロー作詞、河村光陽作曲の、誰でも知っているおひな祭りの歌です。
この歌の歌詞の意味、全部理解していますか?
そして、ちょっと変なところがあるのに気付いていますか?
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右大臣は赤い顔?
雛飾りの四段目に、お姫様とお殿様をお守りする「右大臣」と「左大臣」が飾られます。
うれしいひなまつりの歌詞にある「右大臣」は、どちらでしょうか?
赤いお顔と言うなら、向かって右に飾られたちょっとお年を召した「大臣」の顔がちょっと赤いですね。お酒を召されたのは、こちらですね。
ところが、向かって右の「大臣」は「左大臣」なんです。
右と左は「向かって」ではなく、お人形本人側から見たものを言うんです。
したがって向かって左の若い方が「右大臣」です。
赤いお顔は「左大臣」なんです。
あ~、これもちょっと間違っちゃいましたね。
作詞のサトウハチローは、自分の間違いをとても気にしていて、お家ではこの歌の話はタブーだったそうです。「この歌を捨ててしまいたい」とも言っていたそうですが、意に反して日本中に広まり、ひな祭りの歌と言えばこの歌になってしまいました。
ところで、この「右大臣」「左大臣」も実は「随身」と呼ばれていて、「大臣」ではないんですね(いつからこの通称、「右大臣」「左大臣」で呼ばれていたのか調べが付きませんでした)。
その上、雛飾りの服装から見ると「随身」というのも間違いで、実は近衛中将(このえのちゅうじょう) なんだそうです。
「左大臣」と呼ばれているのは、実は「左近衛中将」(さこんのちゅうじょう)で、「右大臣」と呼ばれているのは「右近衛少将」(うこんのしょうしょう) ということになるんだそうです。
ひな祭りの起源ははっきりしない部分も多いし、伝承されている間に間違ったり、変わってきてしまったりということがあるのでしょう。
桃の花
ここからは「歌詞の間違い探し」ではなく、よくわからない部分、間違って解釈されていたりしている部分を調べてみました。
1番の歌詞、「桃の花」を飾ったり、3番の歌詞「春の風」が灯りをゆすったり、暖かい春の風景ですね。
実際の3月3日はまだ風は冷たいし、桃の花も咲いていません。
3月3日は立春の後ですから、季節的には「春」になりますが、この歌詞からはもっと暖かくなってからの情景が浮かびます。
それもそのはず、もともと季節の節目である「節句」は旧暦の時に始められ、「桃の節句」=「上巳の節句」も旧暦の3月3日、現在の新暦で言えば4月の始めに当たるのです。
4月の初めなら、桃の花もきれいに咲いていますね(もっとも住んでいる地域によりますが・・・)。
桜でも梅でもなく「桃」なのも、興味深いことだと思いませんか?
桃には、百歳(ももとせ)に掛けて、長生きできるようにという願いが込められているんです。
そして、桃には邪気を払う力があると言われていたそうです。
あの丸っこくてかわいい色の桃にそんな力が!と意外ですが、日本書紀の中に伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が、黄泉の国からの追っ手を振り切るのに桃を投げて撃退した、という話があります。
桃太郎の鬼退治も、「桃」に邪気を払う力があることから生まれた話なんですね。
そんなことから、「桃の節句」と呼ばれるようになり、「桃の花」がかざられるようになったわけです。
ねえさまは誰のこと?
歌詞2番の後半、官女に似ているという「ねえさま」とは、誰でしょう?
「女雛」のことでしょうか?この家にお嫁に来た「おねえさん」のことでしょうか?
これはこの歌の主人公の女の子が、雛飾りの官女の顔を見て、お嫁に行ってしまった「お姉さま」のことを思い出しているんですね。
サトウハチローのおねえさんが亡くなっているということで、思い出して書いた歌詞だろうという見方もあるようですが、(もしかして思い出したかもしれないけれど)おねえさんが病気で白い顔をしていたから、というのは違うでしょう。
「色白」は美人の条件だったので、官女の美しい顔を見て、お嫁に行ってしまったおねえさんの色白の美しい顔を思い出した、ということですね。
まとめ
間違いを悔やんでこの歌が好きではなかったというサトウハチローさんにはちょっとお気の毒ですが、この歌は今や「ひな祭り」の代表的な歌となり、「お内裏様」と「お雛様」も、「右大臣」の間違いも、ほとんどの人が勘違いしたまま、という事態になっています。
でもそれは、この歌がとっても良い歌で、みんなに愛されている証拠なんですよね。
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